奈良勲・内山靖「対談 理学療法士とことば,logos」『週刊医学界新聞』第2683号,2006.5.22

己の業務を基礎付けている学問の専門性について考えるために、とても参考になる。 我々は、SW養成課程において、果たして「専門用語を理解・認識する過程」を本当に経ているのか?そして、「ことばを厳密に扱う」ことが専門職に不可欠な要件の一つであるという自覚があるのだろうか? 他職種が集まる介護老人保健施設に就職して、何よりもまず驚いたことは、他職種の使用する語彙の豊富さであった。 記事 以下、印象に残った文章を引用。


専門領域を修学する過程は,専門用語を理解・認識する過程そのものである ――奈良勲氏 ことばを厳密に扱うことは専門職に不可欠な要件の一つである ――内山靖氏 (いずれも『理学療法学事典』序文より) ・医療を含む保健・福祉に関与するうえで知識や理論は大切です。しかし,知識と理論は対象者に提供するものではない。それらの理解に基づいた,技能・技術を提供することが究極的な目標です。(奈良) ・問題点を共有したり,コミュニケーションを深めたりするには,ことばの定義づけが重要になってきます。いま「知識」や「アート性」について話すなかでも,互いにその意味を確認しながら話を進めていかないと誤解を招きます。理学療法学とそれぞれのフィールドにおける実践的理学療法の発展においても,使われている用語をひとつずつ厳密に規定して,標準化していく必要があります。 (内山) ・ことばの進化は専門領域についてもいえることですよね。さまざまな事象や現象から新たな発見を繰り返すことで,ことばも進化しています。しかし,ことばがたくさん出てくるにつれ,それぞれが勝手に解釈されるようになります。それでは専門領域でのコミュニケーションが成り立たないとか誤解を招くので,専門用語についてお互いに共通の認識を持てるように,整理していく必要があります。 (奈良) ・最近,ともすると学術大会というのは,著名な講師の講演を聴くだけに終始する傾向が強いのですが,学術大会の本質は一般演題にあると私は考えています。小規模のスタディであっても,日々の実践的理学療法のなかで疑問に思い,仮説を立て,まとめたものを,ディスカッションを主体としてお互いの意見を引き出させるかたちにしたいと思っています。 (内山)