鶴舞散歩(08.9.1)

・長沼建一郎「論壇 福祉サービス提供にかかる規範と法規範との不連続-危篤時の連絡義務をめぐる裁判例を題材として-」『週刊社会保障』№2491,2008,pp.42-47 種類:総論 ※長沼先生の取り上げるテーマは、いつも臨床上でなんとなくやり過ごしている事柄について目を向けさせてくれる。日本の医療・福祉機関では、身元保証人(身元引受人)という慣行があり、それを根拠に身元保証人(多くは家族)への連絡義務を規範として持っている。また、それがあるから医療・福祉機関側も助かっている部分が少なくない。例としては、「あなたは身元保証人なんですから、○○して下さい。」という話型をとる。具体的には、「本人が壊した椅子を弁償して下さい。」「本人の替えの服が無いので持ってきて下さい。」「今後の方針を決めてください。」「本人を引き取って下さい。」何でもそれを理由にお願いしている。すると身元保証人側だって、「これだけやってるんだから、そちら(医療・福祉機関側)だって誠意を見せてよ。」となっても不思議ではない。そういった意味では、身元保証人という慣行をもとにして医療・福祉機関側と身元引受人側がお互いに持ちつ持たれつの関係を作り上げていると言えなくも無い。但し、そのことと法的規範とは別次元の問題だということだ。 以下、文中で印象に残った言葉。 「福祉の現場では『した方が(あるいはしない方が)望ましいこと』や『するに(あるいはしないに)越したことはないこと』に満ちており、周到に探せば、いくらでもその種の規範は出てくることが考えられる。さまざまなマニュアルや文献、また慣行や過去の事例、他施設の例などを渉猟すれば、あらゆることが『行うべき(あるいは避けるべき)事柄』として規範的に位置づけることができそうである。しかしそれらをすべて法的な義務と等値することには疑問がある。」(p45) 「福祉施設等における諸規範を裁判に『直輸入』することは、その一挙手一投足が賠償リスクと隣り合わせの職場をもたらすことになる。福祉サービスの提供に際しては、つねに人権意識・遵法精神を持つことが必要であるが、これはそれらとは別の次元の事柄であるように思われる。そういう職業だといってしまえばそれまでだが、福祉施設等を、そこまで賠償リスクを伴う法的義務で充満しているものと考えるのは少し酷ではないだろうか。」(p.46) 「本稿は『福祉の世界に、一切法が入るべきではない』とか『法と福祉とは、そもそも考え方として相容れない』などと主張するものでは決してない。むしろ両者を何とか摺り合わせなければならないのである。」(p46) 「福祉サービス提供にかかる規範と法規範をまったく同一視することは、過剰にモンスターを『培養』しかねないと思われる。」(p47) ・尾辻秀久,二木立,権丈善一「高齢者医療制度で議論二分 経済界寄りの政策の是正を」『週刊東洋経済』2008.8.30,pp.106-111 種類:対談 ・真野俊樹「DPCによる地域医療分析の意味」『病院』67巻8号,2008,pp.743-746 種類:総論 ・村上武敏「退院援助における対象者の実態と実践課題」『病院』67巻8号,2008,pp.729-732 種類:実践報告 ※著者は、愛知県小牧市にある小牧市民病院医療福祉相談室所属のMSW。544床、平均在院日数13.3日。著者を含め4名のMSWが勤務。コメントは、鈴木邦夫白山リハビリテーション病院事務長。(元MSW。いやいや事務長になられたのですね。流石です。)