菱川愛「講座 サインズ・オブ・セーフティー・アプローチ[1]」『ソーシャルワーク研究』vol.39,№1,2013-pp.61-70

菱川愛「講座 サインズ・オブ・セーフティー・アプローチ[1]」『ソーシャルワーク研究』vol.39,№1,2013-pp.61-70 【印象に残った言葉】 ・利用者らの欠点や短所は、社会福祉の相談援助としてかかわる上での困難さの理由にされがちである。(p61) ・(SoS)開発の過程において同時代の家族療法の第一人者らをパース市に数か月招聘し、実際の面接を見、良い実践とは何かの模索を続けていた。インスー・キム・バーグ、スティーブ・ディ・シェイザーが招聘された時、解決志向型アプローチ(以下、SFA)の質問に触発され、ブリーフ・サイコセラピーの原理を児童虐待通告から始まるケースワークへ取り込む試みへと展開していった。(p62) ・ストレングス・モデルが利用者らの良いところに着眼するだけの「浅い」実践として流行していることに危惧される。(中略)人格や態度という側面は、安全の構築も願望の実現にも直接的には役に立たない。安全の構築と願望の実現というゴールに役立つストレングスは、家族らのスキルや能力、趣味など興味関心の対象、環境に見出される人、物、機会といった資源を指している。(p63) ・子どもの安全を図るネットワークの人々を見出していくために現場ワーカーは地域に出かけ、商店街の人からサッカー・クラブのコーチまで潜在的に活用可能な人、物、機会を見出していくことが中心的な仕事となる。(p.64) ・「子どものために」というところで家族とワーカーの間に仕事になる関係が築かれる(中略)保護者らへの信頼、揺るぎない確信があり、その前提があるために対立から始まる援助関係であってもスキルフルに建設的な協力関係へとつなげていくことができている。(p65) 【感想】 サインズ・オブ・セーフティ・アセスメント&プランニング書式は、よく見る詳細なアセスメント・プランニング表と異なりシンプルかつ記載ルールが奥深い(対立している事柄も同時に乗せる、子供が分るような言葉で書く、当事者と共にゴール設定をして書き込む)と思った。「家族と面談しているときや関係機関との協議の場では情報は整理された形で順序立って出てくるわけではないから」(p65)とはその通りで、シンプルな構造の書式は利用しやすい。 【関連情報】 ・サインズ・オブ・セーフティのホームページ http://www.signsofsafety.net/ 【関連書籍】 井上直美ほか『子ども虐待防止のための家族支援ガイド』明石書店,2008 ○内容 著者たちが、研究協力者の仲間と一緒にSoSAやリゾリューションズ・アプローチを学び、実際に実践できたことをまとめた一冊。 ○著者略歴 井上/直美 デンバー大学英語センター学生。臨床心理士名古屋大学大学院文学研究科博士前期課程(心理学専攻)修了(文学修士、1983)。非常勤臨床心理職として、岐阜大学医学部付属病院神経精神科、羽島病院精神科、岐阜南病院、井深医院、たなか小児科、岐阜県岐阜病院に勤務。岐阜県岐阜病院臨床心理業務嘱託職員をへて、2003年より日本福祉大学心理臨床研究センター教員、2005年より2008年まで日本福祉大学心理臨床研究センター研究所教員 井上/薫 同朋大学大学院人間福祉研究科・社会福祉学部准教授。臨床心理士名古屋大学大学院文学研究科博士前期課程(心理学専攻)修了(文学修士、1982)。愛知県児童相談所に勤務(1983~1999)。1999年より同朋大学社会福祉学部専任教員。家族援助論、児童福祉臨床研究などを担当。児童家庭相談、特に児童虐待防止ケースマネジメントを研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) ○目次 第1部 家族と一緒に子どもの安全をつくる支援(サインズ・オブ・セイフティ・アプローチとリゾリューションズ・アプローチ―開発の経緯と特徴 サインズ・オブ・セイフティによる家族との関係づくり 「安全」をつくる サインズ・オブ・セイフティのツールを用いたケースマネジメントの流れ サインズ・オブ・セイフティ・アプローチの手法) 第2部 日本における実践の展開(虐待対応とサインズ・オブ・セイフティ・アプローチ 虐待した親への支援―親と支援プログラムへどのようにつなげるか 効果的に面接を進めていくために 子どもと協働して親の理解をつくるプロセス 絵巻物「安全で安心な家への道のり」―「三つの家」と「ことばと絵」を用いる安全プランづくり 「うちの家族をつくる」話し合い 「三つの家」を用いてライフストーリーを共有した事例) アンドリュー・ターネルほか(白木孝二ほか監訳)『安全のサインを求めて―子ども虐待防止のためのサインズ・オブ・セイフティ・アプローチ』金剛出版,2004 ○内容 子ども虐待に関わるすべての専門職にとって、最大の目標は何よりもまず子どもの安全が確保されることであろう。それを実現するための具体的な技法を体系だてて提供するのが、本書で提唱されるサインズ・オブ・セイフティ・アプローチである。どんな家族でも必ず安全性の側面をもっていること、援助者と利用者がパートナーシップに基づいて共働すること、安全とリスクをバランスをとってアセスメントすることなど、著者らの経験と世界中の実践・研究から得られた知見をもとに、その基本的な考え方は12の実践原理と六つの技法としてまとめられているが、さらに、虐待の通告から、アセスメント、計画の策定法や実際の援助場面での進め方、終結に至るまで段階をおって、詳細な実例に基づき具体的、実践的に詳述するとともに、非協力的な家族や法的強制が必要な場合など、対応に苦慮するさまざまな問題にも懇切な指針が示されている。 ○目次 まえがき:インスー・キム・バーグ 序 章 虐待対応への問題提起:ある質問から 第1章 グローバルな展望 第2章 パートナーシップ樹立の実践原理 第3章 実践の見取図:六つの実践技法 第4章 通告を受けて 第5章 安全志向のアセスメント 第6章 ドアをノックする:単なる調査を超えて 第7章 協力的なケース・プランニング 第8章 安全に焦点を合わせたケース・マネージメント 第9章 このモデルをうまく使うための鍵:トレーニング おわりに

チャールズ・A. ラップほか(田中英樹監訳)『ストレングスモデル―精神障害者のためのケースマネジメント』金剛出版 ○内容 地域精神保健福祉に新たな地平を切り開いた『精神障害者のためのケースマネジメント』増補改訂版。 疾患に焦点化するのではなく,個々の精神障害者自身がもっている願望と目標を引き出し,その達成を地域の一般生活者の資源を探索・結合することで手助けする。第1版において地域統合の新しい姿を示し,高い理念だけでなくその効果を実証して既存の精神保健福祉システムにパラダイムの転換をせまった「ストレングスモデル」。第2版はリカバリー概念をさらに強調することでアプローチの基盤を確認し,事例,アセスメントのための具体的な質問,フィデリティ基準など大幅な増補がなされた。 精神障害者の地域支援に大きく舵をとって久しい日本の現状において,本書は個人と地域の潜在力を見出し開放するリカバリー志向の実践が,クライエント・支援者双方にとっていかに創造的であるかを,多くの事例を通して伝えてくれる。 「本物の」地域支援を志向し,精神障害者リカバリーの旅に同行するすべての支援者必携の実践書。 ○著者略歴 ラップ,チャールズ・A. カンザス大学社会福祉学部教授で、カンザス大学社会福祉学部付属精神保健研究訓練所の所長を兼務する。彼はストレングスモデルによるケースマネジメントとクライエント中心業績モデルに基づく社会福祉管理プログラムの共同開発者である。その仕事は、革新的な手法とプログラムを開発し、実施し、検証することを通して精神障害をもって生きる人々の生活を改善していくことに捧げられている ゴスチャ,リチャード・J. カンザス大学社会福祉学部付属精神保健研究訓練所の訓練と技術援助の責任者を務める。ケースマネジメントの指導者、ケースマネジメントチームのリーダー、そしてケースマネジャーとしてカンザス大学に着任した。またカンザス州ウィチタの精神障害のあるホームレスのためのプログラムの指導も行っている 田中/英樹 早稲田大学人間科学学術院人間科学部健康福祉科学科教授(博士:社会福祉学)、精神保健福祉士川崎市リハビリテーション医療センター、川崎市幸保健所、宮前保健所に勤務の後、佐賀大学文化教育学部助教授、長崎ウエスレヤン大学教授を経て、2007年4月から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) ○目次 第1章…歴史,批判,有益な概念:ストレングス・パラダイムにむけて 第2章…ストレングスの基礎理論 第3章…ストレングスモデルの目的,原則,研究結果 第4章…関係とその結び方:新しいパートナーシップ 第5章…ストレングスアセスメント:個人の健康的な部分を展開する 第6章…個別計画:達成課題を創造するために 第7章…資源の獲得:地域を地域精神保健に戻す 第8章…支持的なケースマネジメントの背景:有効性のための状況づくり 第9章…ストレングスモデルのエピローグ:一般的な質問(異議)とマネージドケア 付録I…やる気を失わせる行動 付録II…希望を引き出す行動 付録III…ストレングスアセスメントで調べる領域 付録IV…ストレングスアセスメントの質的再評価 付録V…ストレングスケースマネジメント業務のフィデリティ(忠実度)に関する基準