論文・雑誌

・小島好子ほか「救命救急センターにおける医療ソーシャルワーカーが介入する患者の特性と退院支援」『日本臨床救急医学会雑誌』vol.17,№3,2014,pp.395-402
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/17/3/17_395/_pdf

【要旨】
目的:医療ソーシャルワーカー(MSW)が救命救急センターのソーシャルハイリスク(SHR)患者に早期から支援を実施することの意義と,介入の必要な患者の特性を検証する。方法:MSWが救命救急センターのカンファレンスに参加するようになった平成23年4月からの6カ月間と,参加前の6カ月間の患者の特性を比較した。また,平成23年4月から6カ月間に支援を行った患者のSHRについて,救命救急センターと他の診療科とで比較した。結果:相談実件数は,カンファレンス参加前と比べて3倍に増加し,支援開始までの日数が有意に短縮した(p=0.01)。カンファレンス参加後の在院日数は,有意ではなかったが短縮する傾向にあった(15日 vs 22日,p=0.053)。また,SHR項目のうち,不慮の事故,独居・身寄りなし,精神疾患家庭内暴力・虐待(疑い),自殺企図は,他の診療科と比較し,援助の必要性が高い項目として有意差が認められた。結論:MSWがカンファレンスに参加し,早期にSHR項目を重視しながら対応していくことは,平均在院日数の減少をもたらす可能性があり,救命救急センターの運営にとって有用である。

コメント:自治医科大学附属病院医療ソーシャルワーカーによる研究。「早期にSHR(ソーシャルハイリスク)の問題を解決しても、必ずしも在院日数の短縮につながるとは限らない可能性も示唆された。治療上の面から入院が長期化するケースもあり、ある程度治療の見通しが立ってから退院支援が開始されることもあるので、この点がMSWが早期に介入することと在院日数の短縮との間に統計学的に有意な関連が見出せなかった理由であると考える。」(p.400)

後方視的調査で調査対象数も少ないが、統計処理の水準は高い。疾患分類にICD10コードを使用したことは、他職種と議論する場合にも共通言語となるため有効と思った。結果と考察をきれいに分けて記述しており大変読みやすく、要旨には記載していないが結論でMSWの役割がチラリと述べられている点は素敵である。こういう水準の研究が増えることを望むし、自らの目標にもなる。

【関連】
・日本医療社会事業協会社会保険部救急小委員会「救命救急センターにおけるソーシャルワーカーの業務実態調査 第1次報告書」『医療と福祉』№83,vol.43-№2,2010,pp.4-10

・篠原純史「地域包括ケアシステムにおける医療ソーシャルワーカーの役割」国立医療学会『医療』69(10),2015,pp.434-437

・高瀬昌浩「医療機関の内側と外側の常識のずれを考える―医療ソーシャルワーカー患者の権利オンブズマン市民相談員の視点から―」『医療』68(1),2014,pp.16-20

コメント:国立病院機構横浜医療センター医療ソーシャルワーカーよる研究。同氏は、勤務の傍らボランティアで患者の権利オンブズマン市民相談員として活動している。

・「特集 現場で活用できる意思決定支援のわざ」『緩和ケア』vol.25,№3,2015
https://www.kanwa-plus.com/backnumbers/200079/

【目次】
〔特 集〕現場で活用できる意思決定支援のわざ
・特集にあたって…木澤義之,他
・アドバンス・ケア・プランニングと意思決定支援を行うためのコツ…木澤義之
・アドバンス・ケア・プランニング─現在までの知見とこれからの方向性…阿部泰之
エンディングノートの活用方法…矢野和美
さまざまな意思決定支援の場面
認知症患者の意思決定支援…小川朝生
・面会に来ない家族の意見をどうするか?…長江弘子,他
・代理意思決定者が決まらない時…大関令奈
・家族カンファレンスの開き方─妻の死を受け入れられない夫と,もう治療を望まない妻…畠山とも子
・エンド・オブ・ライフケアにおける意思決定の考え方…尾藤誠司

・「特集 若年成人がん患者の緩和ケア」『緩和ケア』vol.25,№6,2015
https://www.kanwa-plus.com/backnumbers/200083/

【目次】
〔特 集〕若年成人がん患者の緩和ケア─現場で知っておくべきYA世代の特徴と治療・ケア
・特集にあたって…森 雅紀,他
・臨床家が知っておきたい若年成人がん患者の特徴─治療期から終末期まで…森 雅紀
・若年成人がん患者の闘病のプロセスを共に歩む─YA世代の心理社会的特徴とアプローチ…枷場美穂
・現場で知っておくべき家族の課題と看護師にできること
①若年成人がん患者の“親”のケア…畠山とも子
②若年成人がん患者の“子ども”のケア…奥寺さおり
③若年成人がん患者の“パートナー”のケア…柏木夕香
・若年成人がん患者が利用できる社会保険制度─緩和ケアの臨床家が知っておくと,患者の治療・ケアに役立つこと…品田雄市
・若年成人がん患者の意思決定支援─自律と葛藤を支えるケア…入江佳子
・若者の心情を生かしてがん医療を造る…青木和惠

コメント:AYA世代とは、AYA(Adolescence and Young Adult)の略で15〜29歳を指す。YA世代とは、YA(Young Adult)の略で20-30歳代を指す。ようだが、識者によって、想定する年齢が微妙に異なる様子。ポイントは小児と成人の中間世代に焦点を絞り、その世代特有の問題について研究・議論するということか。がんの分野では、現在東京医科大学病院の品田雄市氏が医療ソーシャルワーカーとして活躍されている。