新刊案内

日本社会福祉士会編『地域共生社会に向けたソーシャルワーク: 社会福祉士による実践事例から』中央法規,2018/10/13



〇内容
地域共生社会の実現に向けて、ソーシャルワーカーには何が求められるのでしょうか?
 本書では、地域共生社会の理念について改めて整理したうえで、ソーシャルワークに求められる 機能・役割について具体的に解説しています。さらに、ソーシャルワーカーによって実践されている多様な実践事例を6事例掲載し、そのなかで「アウトリーチ」「ファシリテーター」「アクティビスト」など、 ソーシャルワーカーが果たすべき役割を具体的に示しています。
 分野を限定せず、すべての分野の社会福祉士、必読の1冊です。

〇目次
第1章 地域共生社会の理念とパラダイム
 1 地域共生社会と差別
 2 地域共生社会の理念
 3 地域づくりの方向性
 4 政策としての地域共生社会
 5 包括的支援体制
 6 改正社会福祉
 7 改正地域福祉計画にかかわる
   「参加」について
 8 圏域の設定と「地域福祉行動計画」の
   必要性
 9 地域福祉計画の策定過程と地域住民の
   「学び」
10 地域共生社会の実現に向けた
    ソーシャルワーク

第2章 地域共生社会の実現に向けた
     ソーシャルワークの実践方法
 1 地域共生社会の実現に向けて
   求められるソーシャルワークの機能
 2 地域共生社会の実現に向けた
   ソーシャルワーク実践

第3章 ソーシャルワーク実践事例
 1 複合的な課題を抱える高齢者の
   看取りと地域づくりの実践
 2 地域支援のなかから個別ニーズの
   発見を行い、その対応のなかから
   新たな社会資源を構築していった実践
 3 生活困窮者支援を通した
   「ひきこもり支援」のしくみづくりの
   実践
 4 学校へのコンサルテーションにより
   子ども・家庭・学校・地域の
   主体的つながりを実現した実践
 5 社会的孤立・排除の解消から
   生きがいを生み出す地元商店街との
   協議の実践
 6 多様な働きかけによる世論喚起と
   現実的な要求で刑法改正を実現した
   実践

第4章 地域共生社会の実現に
     求められる人材
 1 社会保障審議会福祉部会
   福祉人材確保専門委員会
 2 委員会の議論の到達点
 3 地域共生社会の実現に資する
   体制構築を推進するために
   社会福祉士に求められるもの
 4 地域共生社会の創出に向けて

〇コメント
MSWはどこまで・どの様にして地域共生社会の創造にコミットするか。それを考えるにあたり、読まざるを得ない。

栄セツコ『病いの語りによるソーシャルワーク-エンパワメント実践を超えて』金剛出版2018/10/21



〇内容
本書では、精神の病いそのものと社会の偏見によってパワーを喪失した精神障害をもつ人々が、いかにして自らの声を取り戻し、病いをもちながらも自分らしい生活を再構築していくのか、その当事者と協働する援助専門職のエンパワメントに基づく支援モデルを提示した。その支援の独自性として、病いの語りに着目したことがある。病いの語りには、精神の病いを経験することで得た生活の知恵をが織り込まれていることに特性がある。本書で紹介したソーシャルワークの実践的研究では病いの語りの特性に価値を置き、語りそのものがもつ力を、ミクロレベルを超えてメゾレベル、エクソ・マクロレベルの実践への活用に試みた研究である。その一方で、精神障害者のエンパワメントを目指した実践を試みる援助専門職がもつ権力性にも言及している。

〇目次
解題:立岩真也
はじめに
第1部
序 章 私の当事者研究
第1章 エンパワメントを志向するソーシャルワーク実践の理論的枠組み
第2章 エンパワメントと病いの語りの関連性
第2部
第3章 語り部グループ「ぴあの」の教育講演会活動の実践的枠組み
第4章 当事者が物語る病いの語り
第5章 「リカバリーの物語」の生成過程における援助専門職の機能と役割
第6章 公共の場における語りは精神障害者に何をもたらしたのか
第7章 公共の場における語りが社会変革をもたらす可能性
第3部
終 章 エンパワメントを志向する実践を超えて
あとがき
文献

〇コメント
目次に「解題:立岩真也」とある通り、立命館大学博士課程立岩ゼミのお弟子さん。

副田あけみ・ 小嶋章吾『ソーシャルワーク記録[改訂版]:理論と技法』誠信書房2018/11/30



〇内容
ソーシャルワークにとって記録のあり方は、最重要課題の一つである。ソーシャルワーカーのみならず援助職には、正確な記録を効率的・効果的に示し、援助活動へ活かし、適切に管理していく能力が要求されている。改訂版では、学習がしやすいように簡潔な構成に変更し、記録の様式と記入例が拡充されている。記録の作成を学ぶ初学者から中級者、さらには、学生の教育や職場に導入する記録様式を判断する立場にある上級者まで、幅広く本書から指針を得られる。デジタル化した記録と個人情報の保全という現代必須の話題についても詳述している。

〇目次
はじめに (副田あけみ)
1 理論編

第1章 ソーシャルワーク記録とは何か
第1節 記録の定義と種類 (副田あけみ)
第2節 クライエントにとっての記録 (副田あけみ)
第3節 ソーシャルワーク記録研究小史 (岩間文雄)

第2章 記録の課題
第1節 個人情報とプライバシーの尊重 (廣瀬 豊)
≪コラム1:ケース記録の開示訴訟≫ (臼倉幹枝)
第2節 記録の開示と共有 (廣瀬 豊)
≪コラム2:個人情報保護制度下の記録≫ (小嶋章吾)
第3節 ソーシャルワーク記録の電子化 (浅間正嗣)
≪コラム3:電子記録のユーザビリティ≫ (廣瀬 豊)
第4節 ケースカンファレンスと記録 (長沼葉月)
≪コラム4:その場にいる人全員で共有しながら記録をとること≫ (長沼葉月)
第5節 評価と記録 (副田あけみ)

第3章 記録の種類と取り扱い
第1節 記録の種類 (大塚理加)
第2節 記録の文体と書式 (木谷雅彦)
第3節 記録の構造化 (小嶋章吾)
第4節 記録の留意点 (藏野ともみ)
第5節 実践過程に沿った記録 (小嶋章吾・小島好子)

2 実践編:各機関のソーシャルワーク記録

第4章 機関・施設における相談援助記録
第1節 児童家庭支援センター (片桐洋史)
第2節 地域包括支援センター (立川正史)
第3節 居宅介護支援事業所 (小嶋章吾・松浦明美)
第4節 福祉事務所 (渋谷 哲)
第5節 介護老人保健施設 (辻 紀江)
第6節 障害者施設 (菊地月香)

第5章 集団・地域援助記録
第1節 精神科病院のグループワーク (藏野ともみ)
第2節 社会福祉協議会のコミュニティワーク (山地晴義)

第6章 運営管理記録
第1節 業務管理記録 (大竹口幸子)
第2節 ケースカンファレンスの進め方と記録 (長沼葉月)
第3節 教育訓練用記録 (小嶋章吾・嶌末憲子)

引用・参考文献
索引

〇コメント
旧版から12年振りの改訂。ソーシャルワーカーにとっての記録に関する体系的な書籍はこれが定番だと思います。改訂版では、顔見知りの方々も追加執筆されている様子。「第3章 記録の種類と取り扱い」の「第5節 実践過程に沿った記録」では、医療機関におけるソーシャルワーク記録についても取り上げられています。旧版が発刊された際は、大変お世話になりました。また副田先生には記録に関する研修講師として愛知県にお越し頂いたことがあります。海外のソーシャルワーク理論を思弁的ではなく明快に記述されるその力量は国内最高峰だと思います。初学者は、どんなソーシャルワーク理論の本を読むよりも、『ソーシャルワークの実践モデル―心理社会的アプローチからナラティブまで川島書店,2005を始めに読まれることをお勧めします。

2018.12.29 修正


近藤克則『長生きできる町 (角川新書)』KADOKAWA,2018/10/6



〇内容
転ぶ高齢者が4倍多い町、認知症のなりやすさが3倍も高い町――。健康格差の実態が明らかになるにつれ、それは本人の努力だけでなく環境にも左右されていることがわかってきた。健康格差をなくし、社会環境を整えることの重要性を確認し、0次予防についての理解を深める。生涯現役・健康寿命・地域共生社会づくりための提言が詰まった一冊。

〇目次
第1章 健康格差はここまで広がっている
第2章 放置できない健康格差
第3章 健康格差は子どものときから始まっている
第4章 健康寿命を延ばすにはどうすればいいのか
第5章 努力しないで減塩する方法
第6章 健康格差を解消するための取り組み
事例1●愛知県武豊町 事例2●千葉県松戸市

Column 予防医学は研究者も研究費も少なすぎる/認知症の発症率は10年で2割下がっている!?/スポーツは見るだけでも健康に!? 他

〇コメント
JAGESプロジェクトの成果を一般市民に分かりやすく伝えるための新書。同じ10月に『研究の育て方: ゴールとプロセスの「見える化」医学書院も同時発売。