第50回日本看護学会-看護管理-学術集会 参加記録

2019年10月23日、名古屋国際会議場にて第50回日本看護学会-看護管理-学術集会へ参加してきました。

目的は、看護管理の文脈においてどのような課題を設定し取り組もうとしているのかを把握すること。第2に、職能団体として看護管理者に対してどのような支援を行っているのかを把握すること。

■印象に残ったこと
〇福井日本看護協会会長報告
・看護師養成のカリキュラム改定に合わせて、日本看護学会の構成も変えている。
・2020年度までは7領域で日本看護学会が開催されるが、2021年度からは領域分けを廃止し、全体で年2回開催とする。
日本看護協会『2025年に向けた看護の挑戦 看護の将来ビジョン』2015を発行。

地域包括ケアシステムは、療養する高齢者だけでなく、子どもを産み育てる人々、子どもたち、障がいのある人々などを含む全ての人々の生活を地域で支えるものである、と日本看護協会は考える。(p9)

療養の場が「医療機関から暮らしの場へ」移行するため、地域における看護活動を内容的にも、量的にも拡充する。これまで看護の人的資源と知識、経験の蓄積は医療機関に集中してきたため、2025年までに地域で活動する看護職員数の大幅な拡充に力を入れる。地域で実践を行うことの意味や価値が、看護職に十分理解されるよう、地域における看護活動の具体的な形を提示し、看護職の地域志向を喚起する。(p18)

・地域包括ケアという言葉で統一されており、地域共生社会という言葉は一切出てこなかった。

鈴木愛知県看護協会会長報告
・ヴァージニア・ヘンダーソン(湯槇ます・小玉香津子 訳)『看護の基本となるもの』 2016年(原著初版1960年)
・1987年介護福祉士法施行(社会福祉士は記載されておらず)。看護と介護の違いが問題にされ、看護職のアイデンティティの危機に

〇鎌田日本看護協会常任理事報告
・今回の看護職員受給分科会による需給調査より推計方法が変更に。地域医療構想・介護保険事業計画の推計値を活用する。
・166万人の職域構成割合は、病院60.5%、診療所20.6%、老健2.7%、特養2.4%、訪問看護2.2%。
・『病院看護実態調査』にて離職状況を把握している。※詳細は、会員のみ公開。
・60歳の定年退職後に働いている看護師のことをプラチナナースと呼ぶ。

〇全体
・過去の大会の写真をきちんと保管している。歴史を語る際に有用。
・本学会参加者の7割は、学会発表経験がない。
・看護師の年齢構造は、少子化の影響を受けて20代は少なく、40;50代の年代層が最もボリュームが多い。
・看護師の2割は夜勤を望んでおらず、夜勤者の確保が課題。
・2017年度、看護協会は公益財団法人大原記念労働科学研究所独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所との三者合同プロジェクトを設置し、『看護職員の夜勤負担に係る調査研究』を行った。このデータを元に、看護師の勤務形態・就業規則について提言していく。
・1988年 認定看護管理者制度発足。
日本看護協会病院看護管理者のマネジメントラダー』2019

日本看護協会看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン』2013

・見藤隆子ほか編『看護職者のための政策過程入門 第2版日本看護協会出版会,2017

〇内容
看護の質を向上させるために、教育現場・臨床現場を変える制度・政策の成立過程を知り、参画していくことが、看護職者1人ひとりに求められています。
本書は、看護職の議員、政策秘書、研究者による詳細な解説とコラムにより、看護の制度・政策の基本的知識、その成立過程の実際,参画方法が初学者にもわかりやすく理解できる内容構成で、質の高い看護を目指すすべての看護職者にぜひお読みいただきたい一冊です。

〇目次

第1章 看護職者のための政策過程論
 ■第1章の概要   
 ■政策過程とは    
  A 政策とは何か
  B 政策過程とは何か
  C 立法のしくみ
  D 価値の配分を乗り越えて
 ■政治過程とは 
  A 説得過程と合意形成
  B 政治的アクターとその役割
  C 政治過程と選挙制度
  D 政策を実現するために
 ■第1章のまとめ  

第2章 看護職者にとって政策とは何か
 ■第2章の概要   
 ■看護職者と政策
  A 看護における政策の前提となるもの
  B 看護における政策の重要性
  C 専門職としての看護と政策
  D 看護に求められる社会的責務と政策
  E 看護職者が自らの未来を決めるために
 ■第2章のまとめ  

第3章 看護職者の政策過程への参画
 ■第3章の概要       
 ■政策過程への参画の実際   
  A 診療報酬における看護職員人員配置基準の見直し        
  B 診療報酬改定における特定の看護技術の評価 
  C 婦・士から師への名称改正                         
  D 准看護師(婦)の養成停止を目指した運動
 ■第3章のまとめ

第4章 看護に関する政策
 ■第4章の概要    
 ■看護現場に影響を及ぼす法令・政策とその課題   
  A 保健師助産師看護師法の課題                    
  B 診療報酬における看護職員の配置                   
  C 病床機能分化の促進と平均在院日数の短縮
  D 看護師等人材確保法と看護教育の大学化の始まり
  E 卒後臨床研修の努力義務化と大学化の促進 
  F 特定行為研修の制度化
 ■第4章のまとめ  

資 料 あなたも行動してみましょう 
 ■現場の声を聞かせてください   
 ■現場の声からわかったことを見てみましょう
 ■看護政策の動きについて学びましょう


日本看護協会看護実践能力の向上にむけて 「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」活用ガイド日本看護協会出版会,2019

〇内容
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」は、共通の指標を用いて全国レベルで看護実践能力を育成することを目的に開発された。ここで示された看護実践能力は、病院・高齢者介護施設訪問看護ステーションなど、あらゆる場での活用が期待されている。本書は、さまざまな組織でのラダー導入・活用の実際を紹介するとともに、web上で公開中の「活用の手引き」を全文収載する。

〇目次

■■第1部「JNAラダー」導入・活用施設の事例 

■Ⅰ既存のラダーをふまえた「JNAラダー」の導入・活用

■Ⅱ多様な場における「JNAラダー」の導入・活用

■Ⅲ「JNAラダー」を活用した地域内教育連携

■Ⅳ「JNAラダー」オンデマンド研修を活用した施設内教育

■■第2部「JNAラダー」活用の手引き 

■Ⅰ「JNAラダー」開発の経緯

■Ⅱ「JNAラダー」の導入・活用

■Ⅲ「JNAラダー」に対応した学習内容

■Ⅳ「JNAラダー」の到達状況の評価と人材育成

■感想
・MSWの職能団体では、卒後教育としての研修提供が主な存在理由となっていますが、看護協会では研修実施は前提として、同時に労働雇用環境の整備にも力を入れていることを確認しました。
日本看護管理学会がある中で、職能団体が学会を開催し、その中でも看護管理領域を設定。学術的というよりは職能団体として看護管理をテーマに交流する場であると思いました。これはこれで、重要だと思います。MSWにおいても同じく管理者が自らの実践を語り、他機関の管理者と交流。職能団体としても交流する場をセッティングして後押しする必要性をひしひしと感じています。
日本看護協会でも、外部シンクタンクや研究者と外部資金を獲得して調査研究活動が数多く実施されていました。そして、その調査結果を踏まえた各種提言など実施しています。協会活動を展開する上で、思いを新たにしました。やはり基礎データを毎年粛々と積み上げていることは強いと思います。
・できていないことを憂うよりも、将来に向けて今できることを順次手掛けていく事が、大切だと思いました。by大森義夫日本のインテリジェンス機関文藝春秋,2005