「社会的入院、『追い出すわけではない』」『CBニュース』2008.2.15

以下、CBニュースより転載。中医協での退院調整加算に関する議論が良くわかる。古橋美智子委員(日本看護協会副会長)の「退院調整に関する診療報酬上の評価は広く一般病棟を退院する方々に向けることが大事だと思っているので、付帯意見に入れていただきたい」という指摘は最もなことである。


入院が長期化する患者を退院させるための「退院調整」が診療報酬で評価される。4月から始まる75歳以上の後期高齢者を対象にした新しい医療制度の診療報酬では「後期高齢者退院調整加算」、74歳以下では入院が長期化する傾向にある療養病棟などに「退院調整加算」が新設される。家族が受け入れないために入院が長期化する「社会的入院」などに的を絞った退院調整について、厚生労働省は「追い出すわけではない。後期高齢者でない若い方々の退院の困難さもあるが、そこは今後の課題だ」と説明している。 【関連記事】 フリーアクセスの制限と「尊厳死」 改定の審議を一巡、次回に答申案  4月の診療報酬改定では、看護師や社会福祉士が入院患者ごとに退院を支援する計画を立て、その計画に基づいて退院させることができた場合に「退院調整加算」として評価される。  対象となるのは、(1)療養病棟入院基本料、結核病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(結核病棟)などを算定する病床に入院している患者、(2)障害者施設等入院基本料、特殊疾患入院医療管理料、特殊疾患療養病棟入院料を算定する病床に入院している患者――など。  このように、今回の退院調整の評価は入院が長期化する傾向にある病棟を中心に進める方針が示されている。  これに対して、古橋美智子委員(日本看護協会副会長)は2月8日の中央社会保険医療協議会で、「結核や療養、精神病棟などに入院する患者の長期化への対策を(診療報酬改定で)検討していることは承知している。このような患者の退院調整は大事だが、この人たちは地域の中に居場所がない。このため、(退院調整の)点数の設定は制度としては適切だが、結果を導くという点では困難が多い」と指摘し、「社会的入院」や「再入院」を診療報酬だけで解決することは難しいとの見方を示した。  一方、75歳以上の後期高齢者の退院調整を評価する「後期高齢者退院調整加算」について、古橋委員は「在宅移行支援が必要な方々は75歳以上だけではない。がんや難病の患者、家族の理解が得られない場合など、在宅への移行が進まないケースの半分は74歳以下の患者であると現場から聞いている」と指摘し、一般病棟に入院している74歳以下にも退院調整加算の対象を拡大することを求めた。  これに対して、保険局の原徳壽医療課長は「今回は後期高齢者のほか、結核療養病棟についての退院調整加算だが、追い出すわけではない。できるだけ治療して速やかに適切な場所に回り、そこの医療をしていくという意味で、まずはここに着目した。後期高齢者でない若い方々の退院の困難さもあるが、そこは今後の課題だ」と説明した。  古橋委員は「退院調整に関する診療報酬上の評価は広く一般病棟を退院する方々に向けることが大事だと思っているので、付帯意見に入れていただきたい」と述べ、土田会長も「大変貴重な意見」と理解を示した。  しかし、入院患者の在宅復帰を進めるのであれば、退院後の「受け皿」を整備する必要がある。日本医師会の天本宏常任理事は、受け皿が整備されないまま在宅復帰を推進した場合、医療を必要とする患者の行き場所がなくなる恐れがあることを中医協で繰り返し主張している。 更新:2008/02/15 08:27     キャリアブレイン