新刊案内

近藤克則『「医療クライシス」を超えて: イギリスと日本の医療・介護のゆくえ』医学書院,2012.2.24 ○内容 著者が前著(『「医療費抑制の時代」を超えて』)で危惧していた「医療クライシス(危機・岐路)」は現実のものになった.本書ではクライシスからの脱出に必要な課題を,その現状と要因,そしてイギリスの医療・福祉改革をもとに考える.さらに「見える化」とマネジメントによる改革の課題を,介護予防と健康の社会的決定要因(健康格差),リハビリテーション医療、終末期ケアの研究を踏まえ提示する. ○目次 序 第1章 医療クライシスの背景と医療制度改革に向けた3つの課題  1 「医療費抑制」に偏した改革の目標・方法に妥当性はあるか  2 医療費抑制による医療現場の荒廃  3 「健康格差社会」日本  4 「医療クライシス」からの脱却に向けた3つの論点  5 公的医療費拡大に向けた3つの課題 第2章 イギリスの医療制度改革-「見える化」とマネジメントによる改革  1 イギリスの医療改革から何を学ぶのか  2 ニューレイバーによるNHS改革の理念と特徴-New Public Managementの新段階  3 イギリスの医療荒廃とブレア政権による改革  4 イギリスの医療・福祉改革における質を高める仕組み  5 イギリスにおける医療政策の決定プロセス  6 2000年以降のブレア政権によるNHS改革への評価  7 ブラウン政権下の医療制度改革  8 日本への示唆 第3章 医療・福祉の「見える化」とマネジメント  1 医療・福祉の大きな流れをどう見るか?  2 医療・ケアの質向上とP4P  3 効果の「見える化」-evidence based medicine(EBM)と大規模データベース  4 「見える化」とマネジメントを進めるための5つの視点 第4章 介護予防と健康の社会的決定要因  1 介護予防政策の概要と現状,そして課題  2 検証「健康格差社会」-AGESプロジェクトからの示唆  3 健康の社会的決定要因と社会疫学  4 「もう1つの戦略」立案に向けて 第5章 リハビリテーション医療を巡る動向と課題  1 リハビリテーションを巡る動向  2 より効果的なリハビリテーションを目指した実証研究事例  3 回復期リハビリテーション病棟の光と影  4 データバンクの開発  5 リハ医療の残された課題 第6章 エンド・オブ・ライフケア  1 終末期ケアの現状  2 質の高い終末期ケアのマネジメントに向けて  3 マネジメント教育・多職種連携教育(IPE)の必要性  4 まとめ-エンド・オブ・ライフケアの課題 第7章 「評価と説明責任」と「マネジメント」の時代に向けて  1 医療・福祉界の課題  2 高齢者医療・福祉改革の課題と戦略-日本版NSF策定に向けて あとがき 初出一覧 索引 column  円-ポンドの為替レート  キャメロン政権のNHS改革  無作為化臨床(対照比較)試験(randomized clinical/controlled trial, RCT)  偽薬(プラセーボ)・二重盲検化(double blind)RCT  システマティック(体系的)レビューとメタ分析  データバンクとは  データベースとデータマネジメント・システム  医療において脳卒中が占める位置  介護において脳卒中が占める位置  用語の違いは?-終末期ケア,ホスピス・緩和ケア,エンド・オブ・ライフケア  MDS-PC(Palliative Care)で評価した終末期ケアの質  多職種連携教育(IPE)  日本福祉大学 終末期ケア研究会10年の歩み  イギリスのホスピス・緩和ケア・プログラム  いったい誰が10年後の医療のことを考えているのか?  1人の待ち時間は約5分  エビデンスでは決まらない.利害が決める?