「日本社会福祉士会ニュースNo.190」2018年11月

日本社会福祉士会ニュースNo.190」2018年11月が2018年11月30日に公開された。

■印象に残ったこと
赤い羽根福祉基金 第3回(平成30年度)助成事業(500万円)に採択された、多文化ソーシャルワーク調査研究事業検討委員会のインタビュー記事(一部抜粋)

支援を必要とする外国人の在留資格も多様化し、福祉サービスを受けにくい(支援しにくい)在留資格の人が増えています。つまり、厚生労働省法務省間に以前からある不具合(生活保護を受けられない在留資格の人が、経済保障がなされない状況に陥ると、入国管理局では在留資格の更新ができず、福祉側から言えば、生活保護準用要件に該当しないから経済
保障できないという不具合)に落ちてしまう外国人が増えているのです。もちろん、それらを越えて、外国人の家族や母子に福祉サービスを提供し、人道上の配慮をする自治体もあります。しかし、それは自治体の裁量であって、本当にニーズのある方たちが権利としてサービスを受けられるという根拠は依然として存在しないままです。(p7)

法の解釈がいったいどうなっているのか、社会福祉士の立場では分かりづらいところがあったりします。例を挙げると、日本人であれば、生活保護を受けていなくても無料で診察を受けられる無料低額診療事業があります。無料低額診療事業というのは、私たちが勉強した中では、在留資格がなくても受けられるものだと思っているけれど、自治体によっては、在留資格があることを前提として運用されていたりして、実際には、無料低額診療事業を担っている病院と、その自治体とがお互いにボールを投げ合って、どちらにも落とし込めないということが起こっています。
(p7)

ほかにも、在留資格のない外国人の子どもが難病になった場合、ある法律では使えることになっているけれども、実際の運用上は、医療保険に加入していることが前提になっているから使えないという対応を受けることがあります。このような時には、制度に詳しい方との連携も必要となり、1つの機関や1人の社会福祉士だけでは太刀打ちができません。また、日本の制度は高齢者、障害者、児童といったようにカテゴライズされているのですが、「外国人」とカテゴライズされた方は、ライフサイクルによっての課題に外国人であることが加わるので、日本人よりも問題が大きくなっています。1人の社会福祉士がすべての制度に精通しているわけではないし、外国人相談においては、いつ何がやってくるか分からないため、どのようにネットワーキングをしていくかが大きな課題です。
(p7)

地域で、いわゆる主軸となっているソーシャルワーカーに支援をお願いする時にも、外国人支援の場合には本当に壁がたくさんあることを感じます。たとえば、病院に「こういう外国人の方がいますので往診をお願いします」と言うと、きちんと通訳者を手配するところもあれば、通訳はあなたの方でやってくださいと言われるところもあります。でも、やっぱり言葉はコミュニケーションの保障ということで、医療ソーシャルワーカーにしっかりと自覚を持ってやっていただきたいなと思います。そして、外国人の中には地域で孤立している人もいますので、私は社会福祉協議会に積極的に介入していただき、外国人を地域社会で受け入れていくというイニシアチブを取って欲しいと思います。(p9)


上記の通り、医療ソーシャルワーカーが抱えている外国人対応の課題と共通しています。職能団体・学識経験者・臨床家が揃って外部資金を得て、「滞日外国人支援基礎力取得のためのガイドブック」を作成し、2019年1月26日に研修を開催予定とのこと(既に満員)。滞日外国人支援委員会発足から12年の到達点でもあります。日本社会福祉士会の外部資金調達力には学ぶものがあります。

※関連
日本社会福祉士会多文化ソーシャルワーク調査研究事業検討委員会『滞日外国人支援に携わる実務者(社会福祉士)の滞日外国人支援基礎力習得のためのガイドブック作成及び研修プログラムの開発事業報告書』平成30年3月

・2018年度都道府県社会福祉士会会長会議報告
ソーシャルワークを考える政治的アプローチの今後の方針」では、人びとの権利擁護と社会福祉の増進を目的とし、社会にソーシャルワークを敷衍していくために、超党派議員連盟の設立に向けた方針を説明しました。2017年度・2018年度に実施した他団体のヒアリング調査結果を踏まえ、2019年度においては、「議員連盟設立に向けた準備」を「ソーシャルワークを考える政治的アプローチPT」を中心に実施していくこと。慎重に進めていくことが求められることからも、その進捗状況にもよるが、2020年度中に「《仮称》ソーシャルワークを考える議員連盟」の発足を目指すことが報告されています。(p14)

日本医師連盟日本看護連盟日本理学療法士連盟日本作業療法士連盟があるように、国会議員・都道県議会議員を通じたロビーイングについては、個別団体・連合団体で議員とやりとりはあるにしても社会福祉分野ではあまり表には見えてこなかった部分であり、歓迎したい活動だと思います。