「進むか、退院支援 退院調整が報酬で評価MSWはこれからどうなる?」『月刊ケアマネジメント』2008.4月号,pp.24-25

「進むか、退院支援 退院調整が報酬で評価MSWはこれからどうなる?」『月刊ケアマネジメント』2008.4月号,pp.24-25 yasmatsu氏より情報提供。4月から新たに始まった、①75歳以上の入院患者に対する「後期高齢者退院調整加算」と、②74歳以下の療養病床等における入院患者に対する「退院調整加算」について、解説を交えつつ、2人のMSWにインタビューを行っている。 冒頭に、「今回の診療報酬改定では、病院や老健施設などで退院調整を行う医療ソーシャルワーカーにも点数がつきました。」(p24)とあるが、ともすると老健でも点数が付いたのかと思ってしまうような紛らわしい文章である。 また、「2年以上退院支援経験のある看護師もしくは社会福祉士が行うこと」(p24)とあるが、正確に言えば病院の「後期高齢者退院調整加算」の施設基準『保医発第0 3 0 5 0 0 2 号基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて』(p19)において「退院調整部門に2年以上の退院調整に係る業務の経験を有する専従の看護師又は社会福祉士」と明記されている。 つまり、2年以上の退院調整経験は、あくまでも病院の「後期高齢者退院調整加算」にのみ課された要件である。有床診療所の後期高齢者への退院調整であったり、医療療養病床を有する診療所における退院調整では、退院調整の経験期間は要件として明記されていない。 また、専従が前提であり、病棟看護業務を行っている看護師や、社会福祉士資格を持っている事務職員が兼務で退院調整業務を行ったとしても算定はできない。 恐らく、「退院調整加算」にまつわる様々な混乱が各地で起こっていることは想像に難くない。せめて公的資金を使って業務を行う我々MSWの責務として、省令・告示・通知を熟読した上で運用し、無用な混乱は避けたいものである。 一方、仮に一般病院の退院調整部門が後期高齢者入院患者の退院支援に年間900件携わったとしても、年間収入はわずか90万円(900件×1,000円)にしかならないため、今期は算定を見合わせる医療機関もあるようだ。今回「後期高齢者退院調整加算」の診療報酬が1,000円と設定されたが、この額を高いと見るか安いと見るかは議論の分かれるところである。私は、今回の点数が厚生労働省から「とりあえずやって見せてよ。」と試された設定だと認識している。次回改定で報酬増額を期待するのであれば、我々自身が質の高い実践に取組み、かつエビデンスを蓄積し、組織的なロビー活動を実施ことが重要であろう。 また、これを突破口にして、MSWが退院支援以外にも行っている業務について診療報酬上評価を得られるように厚労省に働きかけていく必要がある。そうしないと、記事にあるようにMSW=退院係に役割を限定されかねない。 ただし、業務日誌の未整備や電子化の遅れから、そもそも自分たちが年間どれだけの後期高齢者に退院支援を行ったかoutputさえ算出できない退院調整部門が存在することも十分考えられる。まずは初歩的なことがやれるようになることが第一歩であろう。 【参考資料】 ・算定要件(pp.13-15)施設基準(pp.18-19)退院支援計画書(p9)(後期高齢者)退院調整加算の施設基準に係る届出書添付書類(p58)疑義解釈資料(平成20年3月28日付) ※上記資料は全て、厚生労働省HP「平成20年度診療報酬改定に係る通知等について」に掲載されている。 ①2008.4.5 加筆・修正 ②2008.4.8 加筆