新刊案内

古屋龍太編『精神医療95号: PSWの〈終焉〉――精神保健福祉士の現在』批評社,2019/7/10

〇内容
■現在、従来の英文名称のPSW(Psychiatric Social Worker/精神医学ソーシャル・ワーカー)を「MHSW(Mental Health Social Worker/メンタルヘルスソーシャルワーカー)」に改める提案がなされており、全国で議論が始まっている。
PSWは世界に類を見ない精神科病院体制を温存しつつ変革する専門職としてだけでなく、この国のメンタルヘルス戦略や「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の主要な担い手として、期待されてきた。
■一方で「精神保健福祉士」として国家資格化されて以降、PSWは様々な場で制度に位置づけられてきた。PSWは病院でも地域でも制度事務の執行者になりつつあり、所属機関の役割や機能を忠実に成し遂げることを求められている。PSWが大切にしてきたはずの「個別性」や「自己決定」「生活者の視点」等の理念が効率主義に覆われつつある。PSWの業務によって、当事者に対する緩やかな専門職支配が進行しており、誰にとっての、誰に向き合う専門職なのかが問われている。
■時代の改革者として「精神障害者の社会的復権をめざす専門職」を名乗った「PSW」は無くなろうとしている。PSW〈終焉〉の時期を迎えるにあたり、PSW誕生から現在にいたるまでを総括・評価し、時代の行く末を展望する。

〇目次(特集部分のみ)
[巻頭言]PSWの〈終焉〉――精神保健福祉士はMHSWとして未来を拓く?(古屋龍太)
[座談会]精神保健福祉士の現在――ソーシャルワークの危機(大野和男+藤井達也+西澤利朗+相川章子+[司会]古屋龍太)
PSWの終焉とMHSWの到来――未完の社会的復権と、“social”の岐路(吉池毅志)
業務ではなく、実践を!――業務指針への批判(井上牧子)
PSWPSWでなくなる時(富島喜揮)
2017年改正法案に対する日本精神保健福祉士協会の関与の所為とその妥当性について(樋澤吉彦)
PSWの拠るべき価値を振り返る――見過ごされてきた社会のありようを問い続ける専門職として(鶴田啓洋)
PSWの新たなステージを前に(鈴木詩子)
PSWの価値――職業倫理とは何だったのか(桐原尚之)
精神保健福祉士は変革者になれるか(原昌平)
精神保健福祉士に期待する、社会正義を貫くソーシャルワーク専門職へ(小川忍)

〇コメント
なぜ、PSW協会会長の記事を載せない?

井手英策,柏木一恵,加藤忠相,中島康晴『ソーシャルワーカー: 「身近」を革命する人たち (ちくま新書筑摩書房,2019/9/5

〇内容
悲惨に立ち向かい、身近な社会を変革するソーシャルワーカー。人を雑に扱う社会から決別し、安心して暮らすという基本権が保障される社会へ向けて、大胆提言!

〇コメント
著者は、慶應義塾大学の井手英策氏。小田原市生活保護行政のあり方検討会の座長を務めたことで有名。こちらの本では、PSW協会会長と日本社士会副会長が執筆。加えて、あおいけあ代表 加藤 忠相氏。